これは、2004年4月24日の朝7時のNHKニュースで全国ネットで放送されたもの、ならびにそれを基に書かれた新聞報道です。『沖縄タイムス』と『琉球新報』の両者が25日朝刊に掲載しています。NHKで放送された内容と『沖縄タイムス』の記事を紹介しておきます。イギリスの国立公文書館に所蔵されていた資料で、2004年3月に行ったときに見つけました。すぐに発表するつもりはなかったのですが、NHK記者からくりかえし取材をうけ、熱心さについついこういう資料ならあると見せてしまいました。
 記事の内容について一言言っておけば、これは軍の文書か、警察の文書なのか、よくわからないので、『沖縄タイムス』の見出しは正確ではないと思います。その点では『琉球新報』の方が正確でした。
 なお昨年(2003年)に報道された資料についても、もっとくわしく書く必要があるのですが、なかなか機会と時間がなく、そのうちどこかでくわしく紹介したいと考えています。今年は無理そうですが。
                                                   
2004.7.29記


NHKニュース 2004.4.24 朝7時のニュース

沖縄戦 旧日本軍が警察に指示

 この資料は、沖縄戦の最中にアメリカ軍が旧日本軍から押収した文書を英訳したもので、神奈川県の関東学院大学の林博史教授がイギリス国立公文書館で入手しました。文書には、警察官に対する指示が7項目にわたって記載され▽「敵の占領地域に潜入し、状況を偵察すべし」とか▽「国民を利用して敵の幹部を暗殺し混乱に陥れよ」などと軍の作戦に協力するよう指示しています。さらに「敵に協力する者を見つけたら殺すか、適当な処置をすべし」とアメリカ軍に協力する住民を殺害するよう指示しています。沖縄県警察史によりますと、沖縄戦当時、県警察は、県庁の一部門としてけがをした住民の救護や避難誘導にあたり、軍への協力としてはスパイの取締りなどを行うことになっていましたが、警察に軍の作戦に加わるよう指示した文書が見つかったのは今回が初めてです。林教授は、「旧日本軍が軍属でもない警察を作戦に組み込もうとしていたことがわかる注目すべき資料だ」と話しています。

 

沖縄タイムス 2004年4月25日 朝刊

警察官に住民殺害指示/旧日本軍文書の英訳資料
関東学院大・林教授入手

 沖縄戦当時、旧日本軍が警察官に対し、米軍に協力した住民の殺害などを指示した文書の英訳資料が二十四日までに明らかになった。同文書は、旧日本軍文書とみられ今年三月、関東学院大学の林博史教授がイギリス国立公文書館で入手した。文書には、軍への協力のほか、ゲリラ戦など戦闘への参加も指示している。林教授は「旧日本軍が警察を作戦に組み込むことで、住民の戦争への動員や住民虐殺に利用しようとしていた実態がうかがえる。戦争における警察など行政組織の役割をきちんと明らかにしていく必要がある」と話している。

 文書は、警察官に対する七項目の指示を記載している。敵占領地域にいる住民については「秘密裏に捜査を行うべし。もし敵への協力者を発見すれば、殺すか、他の適当な処置をすべし」と米軍に協力した住民を殺害するよう指示している。
 また、「変装した警察官や民間人から選抜した密偵は、敵の占領地域に潜入し、状況を偵察すべし」「敵の掌中にある国民を利用して敵の幹部を暗殺し、敵陣営を混乱に陥れよ」などと軍の作戦への協力を指示。

 資料は米第一〇軍司令部が一九四五年六月十九日付で作成した旧日本軍文書の抜粋。米軍から情報提供を受けた英陸軍省文書の中から見つかった。日本軍文書の現物は見つかっていない。
 文書の内容などから、米軍が上陸した四五年四月から六月にかけ、旧日本軍あるいは警察組織が作成したものとみられる。
 林教授は文書の内容や沖縄戦の状況から、北部地区を対象に出されたと推定している。本島北部では、翼賛壮年団を中心とした「国士隊」が結成され、住民をスパイ視した虐殺・虐待事件との関連が指摘されている。
 林教授は「住民虐殺では、軍が米軍に保護された住民を特定して殺害しているケースもある。文書にあるように、警察官や一部の住民による軍への協力が、住民虐殺などにつながっているのではないか」と指摘する。

 沖縄県警察史などによると、沖縄戦当時の県警は、住民の救護や避難誘導、スパイ取り締まりなどを行っていたが、軍の作戦への協力に関する記載はない。また、これまで作戦参加や協力を裏付ける資料は見つかっていない。