正誤訂正

林博史『日本軍「慰安婦」問題の核心』花伝社



1)62頁 後ろから5行目
   (誤)「建前上は、ユダヤ人とのセックスは認めないとしながら、実際には「慰安所」で認められている。」
   →全文削除

   [理由] 強制収容所内の「慰安所」では、ユダヤ人女性はいなかったというのが最新の研究成果ですので、この文は削除させていただきます。


2)62頁 後ろから4行目
  (誤)「この強制収容所の慰安所は、SS(親衛隊)のためのものと、収容所で強制労働させられた囚人のためのものとの二種類があったようです。」
 →(正)「この強制収容所の慰安所は、収容所で強制労働させられた囚人のためのものでした。ただ一部、ウクライナ人のSS(親衛隊)のためのものがあったようです。」

  [理由] ロベルト・ゾマー氏の最新の研究によると、SSのためのものはなかった(一部、ウクライナ人SSのためのものを除き)ということであり、原文は不正確でした。この手は、ゾマー氏にも直接、確認しました。

 なお本書は2015年6月刊行ですが、その後、2015年12月に、レギーナ・ミュールホイザーさんの著作の邦訳が刊行されましたので、それをご参照ください。
   レギーナ・ミュールホイザー、姫岡とし子監訳『戦場の性―独ソ戦下のドイツ兵と女性たち』(岩波書店)


3)日本以外の国の軍用性的施設の呼び方について

 正誤訂正というものではありませんが、本書のなかで、日本以外の国の軍用性的施設について、「慰安所」という言い方をしています。その後、イギリス軍の軍用性的施設の史料を多数、入手することができ、またフランス軍についても情報が集まり、それらの事例を見ていく中で、あたらめて確認したことですが、英仏独軍などでは、売春宿、売春婦という言葉を使っており、「慰安所」「慰安婦」にあたる言葉は使っていません。第2次大戦後の韓国では「米軍慰安婦」という言葉を使っていますが、これは日本軍の影響であると考えられます。日本軍の場合も、1930年代以降のことです。

  したがって日本軍だけが、なぜ1930年代以降、「慰安」という言葉を使うようになったのか、それ自体が十分に検討しなければならない問題だと思います。各国軍の事例を検討する際には、日本軍「慰安所」「慰安婦」と共通するものがありますが、それぞれの言語の表記に忠実に邦訳する必要があると思います。

 今後、軍用性的施設(あるいは軍人向け性的施設)という表記で把握し、それぞれの特徴を分析することにしたいと考えています。そのうえで、それらに共通する用語・概念として、どのような言葉がふさわしいのか、あるいは共通するものはないのか、などについて考え、次の著作において、私なりの一定の結論を示したいと考えています。                
                                                                                                                            以上