2014年10月26日 於 在日本韓国YMCA
Fight for Justice開設1周年&ブックレット出版記念

シンポジウム 「性奴隷とは何か」

 

開会のあいさつ   林博史 

 みなさん、こんにちは。今日はこんなにたくさん集まっていただきありがとうございます。席がない方には申し訳ないのですが、最後までよろしくお願いします。
 ご存じのように、私たちのサイトFIGHT for JUSTICEは、一昨年(二〇一三年)八月一日にオープンいたしました。とにかく最近は多くの方々が本をなかなか読まず、ウェブサイトでさまざまな情報を得る傾向が強いのですが、その情報があまりにもひどすぎるので、きちんとしたサイトをつくろうと考えてこのサイトを開設し、一年あまり経ちました。一周年にあわせてシンポジウムと、ブックレットを出そうということで準備を進めてきましたが、ちょうどそのときに朝日新聞の「慰安婦」問題に関する検証記事が出て、それ以来、否定派によるすざまじいキャンペーンがはじまりました。ブックレットの準備が遅れていたことでかえって、この朝日の問題をどう考えるのかも含めブックレットで取り上げることができました。今日は出来立てほやほやですのでぜひお買い求めをいただいて、すでにサイトに載っているものもありますが、今回新たに書き下ろしたものもいくつかありますのでご参照ください。
 右派の「慰安婦」否定派のキャンペーンは大新聞とか大きなメディアが会社の金を使って大規模にやっていますが、われわれのサイトは組織的なバックアップはありませんので、すべて手弁当でやっています。ですからぜひ多くのみなさんのカンパをお願いしたいと思います。
 この間、「慰安婦」問題そのものがねつ造であるかのようなキャンペーンが打たれています。また、今日お話しをする吉見義明さんが裁判を起こしていますが、そこでもいよいよ性奴隷制をめぐって本格的な議論に入ってきています。数年前までは「慰安婦」問題と言うと、ほとんどメディアからも忘れ去られてこのまま消え去っていくのではないかという危惧があったのですが、「慰安婦」問題はきわめて大きな問題であることが、否定派のキャンペーンによって――否定派がこれだけこだわっている、つまり、これはきわめて重要な問題なんだということが逆に浮き彫りになっているのではないかと思います。
 そういう意味で今日のシンポジウムは、「性奴隷制」を正面から議論をする場ですけれども、この問題が日本社会のなかで広く関心を集めている状況で、市民のみなさんと一緒に考える絶好の機会にしていきたいと考えています。また、私たちのサイトを、ブックレットも含め、国際社会に対して日本には非常識な人間ばかりじゃない、良心がある市民がたくさんいるんだということを知ってもらう、そういう反撃のきっかけにしていきたいと思っています。最後までよろしくお願いいたします。


閉会のあいさつ   林博史


 みなさん、今日はほんとにありがとうございました。こんなにたくさんの人が来るとは思っていませんでしたので、最後まで熱心に立って聞いて
いたみなさんも含め、参加していただいたみなさんへお礼申し上げます。
 最近、この問題をめぐってあちこちの講演会に行くと、主催者も驚くような多くの人が集まって、やはりみなさん危機感を持っているんだなと思います。時間がないのでシンポジウムの内容を振り返ることはできませんが、たとえば日本軍「慰安婦」は悪くないんだ、とか、強制連行じゃないから人身売買は仕方ないとか、公娼制は良かったんだという、ひたすら過去の日本軍を正当化することでしか自分を慰められない人々は、これからの日本の在り方をいったいどう展望できるのでしょうか。「慰安婦」制度のようなひどい犯罪の事実をきちんと直視して被害者に償い、二度と繰り返さない、そのうえで、日本はそうした過去を克服したのだから、その経験を生かして、世界でこのようなことが二度と起きないように積極的に世界に働きかけるんだという前向きの未来志向こそが必要ではないでしょうか。
 今日のシンポジウムにおいて、歴史の問題から現代の問題まで取り扱っていただきましたけれども、私たちがどういった日本をつくるのか、つまり、本当に女性の人権が保障されるということは、私は同時に男の人権が保障されることだと思います。慰安所の前に列をなしている兵士たちを見ると、男たちがまともな人間として扱われていないことを痛感します。もちろん非人間化された男の相手をさせられる「慰安婦」の女性たちはいっそう非人間的な扱いを受けていることは言うまでもありませんが。
 女も男も人間らしく生きることができる社会をつくる、そういう未来を展望し、つくっていくことが私たちの運動だと思っています。日本社会のなかでその取り組みをみなさんと一緒に進めていきたいと思います。今日は本当にありがとうございました。

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